スマートフォンとアフターケア


NokiaやHTC、そしてiPhoneAndroidなどのスマートフォンが次々と出てきています。
最近ではXperiaなんてのも出てきました。
スマートフォン好きなLIMUにとっては嬉しいことであり、スマートフォンユーザーが増えることも嬉しく思います。


ただ経験上、デザインだけでスマートフォンを買ってしまった人、話題になっているからという理由で何となく購入して後悔している人も中にはいるというのが現実です。


そこで、色々と思うことを。






元々、携帯電話業界に携わっていた自分は、割と色々な店舗での現状というのは理解しているつもりです。
お偉いさんである社長とか副社長とか営業本部長とか、とりあえず色々なメディアの取材に取り上げられるような人たちは、どこまでその現状を把握しているのだろうかと疑問に思う。



さっきも書いたように、スマートフォンユーザーが急速に増えている。
使いこなせず、電話帳の移行もよく分からない、そもそもメールの設定って何だよ?っていうところから説明を求めてくる人が多い。


スマートフォンという今までにない特殊な携帯電話を買うのなら、やはり自分で調べた方がいいというのが個人的な本音であるし、その方がその人のためになるとも思っているのだが、そうもいかないのが接客業。
分からないことがあるから困っている、困っているからわざわざ足を運んでいる。
そんな客を、無下に扱っていいはずがない、それが接客業だ。


だが、Appleは特に秘密主義であり、新商品のiPhoneが出るということになっても商品説明は一切なく、店頭スタッフはネットの記事を見た程度の知識しかない。
所謂、一般のお客と同じ程度のことしか知らない、知らせてもらえない。
それでも店頭には問い合わせが殺到する、出る電話は「またiPhoneのことかよ」、問い合わせできたお客も「iPhoneについてなんですが、ネットの記事で読んだんですが」というような。


まあAppleは仕方ない、そういう主義なんだからそれに従うしかない。
それはスタッフが頭を下げればいいだけのこと。
分かっている限りのことは精一杯伝えたい、でも知らないことは伝えられないもどかしさ。
そんな胃の痛みなんて、お偉いさんには分からないわけで。



そんなiPhoneパニックから2年が過ぎ、様々なキャリアから個性豊かなスマートフォンが続々発売されている。
ちなみに、 docomoは割とメーカーの営業さんが新商品を手に勉強会に来てくれるから助かっていた。
実際に実機を10台くらい持参してくれて、実機を触りながらセールストークを伝授してくれるので、発売日であったとしても自信を持ってお客と話すことが出来る。


Nokiaさんも、日本から撤退する前は勉強会によく来てくれていた。
営業さんが新商品の説明に来てくれると、もう一つ嬉しいことがある。
スタッフに、販促品のグッズをたくさん持ってきてくれるということだ。
Nokiaの、リーフのストラップは本当にかわいかった、あれは今でも愛用している。


っと、話が逸れました。


勉強会を積極的に行ってくれると、スタッフはとても助かる。
自信を持てるトークというのは、最大の武器だ。
不安げな接客は、やはり客に不安を与えるばかり。
だけどそれ以上に、スタッフもストレスを抱えてしまう。


スマートフォンが次々と出る中で、どの程度の勉強会が開かれているのだろう。
そしてスタッフ自身も、どの程度「自発的に勉強しよう」という心構えがあるのだろう、と思う。


ここで最初の話に戻るわけで、電話帳の移行の方法が分からない、メールの設定が分からない、そんなお客に技術的なケアが出来ないのが現状。
辛うじてなんとかセールストークは丸暗記でどうにかなる、でも、そこから先のアフターケアが出来ないのが現状。
それは特に商品名を上げるまでもなく、ほとんどのスマートフォンに対して、多くのスタッフがどこか遠ざけ、なるべく触れなくてもいいような立ち位置に逃げている。


中には詳しいスタッフもいる。
たまたまデジものが好きで、たまたまそのシリーズを使っていて。
もしくは、仕事だから、という理由で自発的に勉強して。



LIMUが知っているショップのお姉さんは、たまたまデジものが好きで携帯電話業界に足を踏み入れた人だった。
そしてiPhone3Gを購入したが、元々の購入理由は「仕事だから」という理由だったそうで。
「実際に使ってみないと分からないから。それに、本社の人たちは『スタッフはiPhoneを買うべきだ』って言われてるしね。」とも言っていた。
熱心な人だったと思う。


ショップ内でいち早くiPhone3Gを購入したお姉さんの手元には、iPhone3Gが2台もあった。
買えと言われたから買ったのに、その後に会社から支給されたそうで、少し気の毒に思った。
支給されることが分かっていたら、買わなかったかもしれないのに、と。


スタッフ全員に支給されたらしいが、結局iPhone絡みで来る客は、全てそのお姉さんが担当していたそうだ。
胸には「iPhoneマスター」というバッジを付けさせられていた。
本人は少し嫌そうだった。
なぜなら、支給された人は全員マスターであるはずなのに、なぜ自分だけがその仕事をしているんだろう、と。


でもLIMUは、彼女の接客スタイルがすごく好きだった。
彼女に聞けば、色々なことが教えてもらえるし、まるで友達と話しているような感覚になった。
他の客と話している彼女を見掛けたことがあったが、やはりiPhone関連の「電池がもたない」というクレームを受け付けていたが、客が帰る頃には客はすっかり笑顔になっていた。
電池節約に有効な設定方法を教えてもらったり、何か面白い無料アプリを教えてもらえたりしたそうだ。


iPhoneの記事を書きたい時、LIMUはよくそのお姉さんに「取材」のように話を聞かせてもらっていた。
たまに一緒にお酒を飲ませてもらえるようにもなったから、今、この記事が書ける。


直営店であれ代理店であれ、結局は普通の女の子たちが窓口に立っている。
私はたまたまデジものが好きというだけで、携帯電話に特に詳しいというわけでもないし、iPhoneは「使っているから知っているだけ。自分が知りたいから調べただけ」という部分で接客が出来ている。
でも他のスマートフォンは違う、あれは実際には苦手。
だけど私がiPhoneに詳しいから、スマートフォンのことでも何でも分かるっていう偏見があるみたいで、さっぱり普通の携帯電話の接客はしてない。いつもiPhoneスマートフォンばかり。
しかもそういうのって、ややこしい内容が多いから苦労も多い、クレームも多い。
そういう接客をしたとしても、別に「普通」なんだろうね。
社内の資格習得の勉強はみんなしっかりやるのに、スマートフォンのことなんてさっぱり勉強しようともしない。
お給料に如実に反映されるからね、資格は。
でも本当にスタッフに必要なのは、現場で必要な知識なんかないかなって思う。
反抗期だから私はそんな資格、取らないけどね(笑)


その他にも色々と言っていた。
それらの話を聞いて思ったことは、末端までしっかりとケアできていない現状があること。
そしてその末端がお客と実際に対面して商品について話したり、お客のアフターケアをするというのに、ちょっと不安になってくる。


スマートフォンのような機種が溢れてきているというのに、現場のスタッフがそれに対応しきれていないというのはとても不安だ。
サポートセンターに電話できる人、ネットで自分で調べられる人にとっては無縁のことだ。
でも、実際に対面して実機を触りながら説明してもらわないと困る人にとって、現場スタッフの知識不足というのはもどかしいを通り越して腹立たしく思われることも多いのではないだろうか。


いや、自分で調べることが大事だよっていうのは大前提でLIMUの中にはある。
それでも困った時、どこかに助けてくれる人は必要なんだと思う。
そして身近なのが、自分がそのスマートフォンを買ったショップなのではなかろうか。


売るだけ売って、あとは知らないフリをするというのは売り手側としては無責任すぎる。
もちろん、買う側にも責任があるとかないとか、そういうことは以前の記事に書いたからもう省略する。


末端へのケアが出来ていないのに、需要が伸びてきているからどんどん市場にスマートフォンを出していく各キャリア。
CSについて、どこまで考えているのか不安になることがある。



これだけスマートフォンを売り出して、iPhoneが売れたもんだから「俺らも俺らもwwww」と競って新製品を出して、メーカーはそれでいい、それが仕事だ。
でもキャリアは、今のところはそういうわけにはいかない。
売ったからには責任があるのではなかろうか。


ユーザーを増やしていきたい、そこに活路を見出しているという部分があるのなら、さっぱりスマートフォンのことを分からず「教えて君」が買っていくことも想定されるべきことであり、そういう人にも売っていくつもりがあるのだろう、お偉いさんは。
それなら、それをカバーできるだけのものを末端に伝授するなり徹底するなりをするべきなのかもしれない。


売りっぱなしは、一番やってはいけないことだと思う。


AppleStoreのGeniusBarは本当に素晴らしいシステムだと思う。
売るのに特化したスタッフ、技術的な部分を含めたアフターケアに特化したスタッフを用意することにより、店舗自体の回転率もよく、ユーザーは絶大の信頼を寄せることが出来ると思う。
もっと日本も(携帯電話業界だけではなく)こういうシステムを取り入れるべきだと思う。
互いが互いを尊重し、互いに負担を分け合えるシステムを作ればいい。
誰かだけに負担を押し付けるべきではない。


スマートフォンが次々と発売されるこの時期だからこそ、強く思った。




ちなみに、LIMUが親しくさせてもらっていたショップのお姉さんは退職してしまいました。
とても悲しいことです。
あれほどまでに色々な携帯電話のことを、スマートフォンも含めてよく知っていたお姉さんがショップからいなくなるということは、とても寂しいことです。
彼女がいなくなったので、おそらくLIMUはもうそのショップに行くことはないでしょう。
もしLIMUが欲しいスマートフォンが発売されたら、どのショップで買えばいいのだろうと、ちょっと途方にも暮れました、寂しくなります。


もうこのようなことがないよう、末端にまで徹底したケアをしてほしいものです。
スマートフォンが次々と発売されるこの時期だからこそ、改めて見直すべきなのではなかろうかと思う。